ミャンマーのヤンゴンで反軍政デモを取材する北角裕樹さん(北角さんのFBより)

 

声明

ミャンマーでの日本人ジャーナリスト北角裕樹氏の拘束に抗議し解放を求めます

軍事クーデターが起きたミャンマーでジャーナリスト・北角裕樹さんが4月18日夜、自宅で治安当局に拘束され、刑務所に移送されました。ミャンマーでは2月1日に国軍のクーデターが起き、それに抗議する民衆のデモに軍、警察が銃撃し、これまでに700人以上の市民が殺害され、3000人以上が拘束されています。ジャーナリストやカメラマン、メディア関係者70人以上も逮捕され、多くの主要メディアの免許が剥奪されました。北角さんの拘束はミャンマー国軍勢力によるジャーナリズム弾圧の一環です。

私たち「危険地報道を考えるジャーナリストの会」(危険地報道の会)は、ミャンマー情勢を日本に伝えてきた北角さんが拘束されたことに抗議し、即時釈放を求めるとともに、現地で民主化プロセスが踏みにじられ、軍による市民への暴力が続いていることを強く非難します。

北角さんは日本で新聞記者を経て、2014年にミャンマーに渡り、現地で編集プロダクションを立ち上げて、ミャンマーについて取材・執筆してきました。クーデター後は、軍が外国人ジャーナリストの入国を拒否する中、ミャンマーにいる数少ない日本人ジャーナリストとして、SNSでの発信や日本のメデイアを通じて現地の状況を伝えてきました。

北角さんは日本のメディアのインタビューの中で、「世界の人にミャンマーでひどいことが起きていることを知ってほしいという声が非常に強い。軍の残虐行為を平和的なデモだけでは止めることはできない、国際社会に圧力をかけてほしいと(人々は)思っています」と現地の声を伝えていました。

北角さんの逮捕容疑は、現地のジャーナリストと同様、「フェイク(虚偽)ニュースを拡散させた」とする「刑法505A条」違反です。政府が自分たちに都合の悪い報道や市民の情報発信を「フェイクニュース」として弾圧する言論統制は、近年、世界の強権的政府の常套手段となっています。ミャンマーでもクーデター後に、刑法が改正されて、「刑法505A条」が導入されました。

ミャンマー軍によるジャーナリストたちの不当な逮捕・弾圧は、ミャンマー人の言論を封じ込めるだけでなく、ミャンマー情勢を世界から隠ぺいしようとするものです。特に、日本に情報発信していた北角さんを拘束したことは、ミャンマーにとって重要な支援国である日本で、ミャンマーの人権侵害の実態が広がることを恐れたものであり、私たちの知る権利を侵すものです。

日本政府はミャンマーに対して2011年―2020年の10年間で、100件を超えるODA(政府開発援助)の無償資金協力を実施し、総額は1400億円に上ります。2020年にはミャンマーの警察に車両や無線機材を提供し、治安対策を支援しています。さらに400以上の日本企業が進出しています。

北角さんによる報道と、彼自身の逮捕によって、ミャンマーの民主化プロセスの崩壊と悲惨で不当な人権侵害の実態が明らかになった以上、日本企業の投資や進出や日本政府の支援は即刻停止されるべきです。

私たちは北角さんの拘束は、ミャンマーでの市民に対する深刻な人権侵害の一部であると認識しており、日本の政府、企業、市民社会が、北角さんの釈放とともに、ミャンマーが一日も早く、市民への暴力と言論弾圧を終わらせ、民主化プロセスに復帰するよう、あらゆる手段を使って働きかけるよう求めます。

2021年4月30日 危険地報道を考えるジャーナリストの会
(世話人)土井敏邦/川上泰徳/石丸次郎/綿井健陽/五十嵐浩司/高橋弘司